品番-162番

波うさぎと珊瑚の小物入れ 

 

波の型染めが爽やかな木綿の古布に、

山桜で手彫りしたウサギの前飾りを合わせて『波うさぎ』の小物入れに仕立てました。

 

「波うさぎ」は、古来から日本人に好まれてきた吉祥の紋様です。

「うさぎ」は多産で繁栄を意味して、「波」などの水に関わるモチーフは火伏せの紋様。

「波うさぎ」は、醍醐天皇の時代の演目の能の謡曲「竹生島」から生まれたと伝えられています。

  「緑樹影沈んで魚木に登る気色あり  月海上に浮かんでは兎も波を奔(はし)るか 面白の島の景色や」

     〜醍醐天皇の臣下が琵琶湖の竹生島へ弁財天を詣でるためにやって来ます。

      湖畔で出会った老漁師と若い女が乗る釣り舟に乗せてもらい、

      くだんの歌は、その舟から見えた景色を詠んだものです。

      若い女は弁財天の化身、老人は龍神の化身という、吉祥尽くしの演目です。〜

 

「波うさぎ」の紋様は、そのめでたさにあやかろうと古来から愛されてきたモチーフです。

内布には、ぴょんぴょん跳ねるウサギに掛けて、テニスのラケットの模様が並ぶ藍らしい昔木綿を。

仕切りポケットにはなでしこ紋の藍の型染め布、

前ポケットにはおもちゃ尽くしの華やかな絹布を合わせました。

かぶせを開けると、弁天様をイメージして、

珊瑚と珊瑚玉の飾りが眼を喜ばせてくれるように配しました。

 

留め紐は京都の老舗、伊藤組紐店のさくら色の絹の紐を。

帯締と同様に、上質な紐は心地よいほどにキュっと締めてくれます。

紐に通したのはビンテージのビーズを緒締玉として。

黄色の緒締玉を月に見立てて。

月に遊ぶ波うさぎの小物入れが出来上がりました。

 

大切なものを仕舞うための小物入れ。

そっと密かにバッグの中に、

机の引き出しに、

箪笥の中に仕舞っておきたい、

思い出のジュエリーやお子様の誕生の記念の品、

いつも持っていたいお守りなど、

そんな大切な何かを仕舞うための小物入れです。

 

薺nazunaの袋ものは文字通りすべて手縫いで仕立てた布手仕事です。

そして留め具も自ら手彫りして作っています。

山桜は出雲の山で間伐採されたものを30年以上乾燥させたものを使用し、

材を糸鋸で切り出し、彫刻刀で一つ一つ彫っていきます。

数段階の耐水ペーパーのやすりで磨き、艶を出して、

仕上げにシアの実から採ったオイルで仕上げます。

一つの小物入れに使う留め具を形にしていく作業は、丸一日以上掛けて作ります。

この行程もすべて手作業で機械で切り出したり削ったりはしません。

手の仕事で仕上げることが薺nazunaの信条だからです。

 

小物入れが一つ仕上るまでにかかる日数は作品によって異なります。

表布に合う布を探し、緒締玉やビーズなどの素材を集めて、

時には麻糸やシニューの糸で紐を編み、糸や布を染めたり、

一つ一つの小物入れが物語を紡ぐように仕上げるために時間を掛けます。

そうして出来上がったとき、何か言い様のない満足感を感じます。

丁寧に時間を掛けて作ったものだから、

何かしら心和むものをお届け出来たら幸いです。

 

size : W15.5cm × H10.5cm
(蓋をぴったり閉ざした時のおよその大きさです。)

表布 :型染め木綿  古布

内布 :昔木綿  古布

ポケット :藍染の型染め木綿  古布

前ポケット:おもちゃ尽くし柄の正絹  古布

留め具:山桜を手彫りしたもの、珊瑚、珊瑚玉

留め紐 :絹の組紐、シニュー糸

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