品番-156番

長門と網代尽くしの小物入れ 

 

和紙を細く紙縒した糸だけで織られた布=長門。

漆、または柿渋などでこっくりした色に染めた布は、

とても和紙で織られたものとは思えないほど。

和紙のまま、かばんや袋ものに作られているものはよく見かけますが、

この長門という布は、これまで多くの古布に触れてきた中で、たったの一度だけ出会ったもの。

過去にこの布で小物入れを一つと長財布を一つ。たった二つだけお作りしました。

小物入れは”大切なものを仕舞うための”袋ものなので、全面に長門を使って。

日常の使用頻度の高い蛇腹の長財布は、なるべく傷まないようにかぶせの前面の装飾に使用して、

珍しい布の面白さを楽しんで頂きたいと思いました。

 

その後はしばらく寝かせていた長門の布。

合わせる布のイメージが固まったら仕立てようと思っていました。

長門を手に取ると、端正で均一な織り目は紙縒された和紙の糸作りの技の凄さを物語り、

綾織された織り目は繊細な編みが施された煤竹の竹籠のよう。

ならばと、内布を網代編み紋様(算崩し)の布だけで仕立てよう、と思いました。

かぶせやポケットのパイピングには、明治期に織られた布です。

かぶせ側は木綿のもの。ポケット側は沖縄、琉球時代の麻を。

内布には、手紡ぎ手織りの鮮やかな花代色の入った算崩しの木綿布を合わせて。

仕切りポケットも算崩しの藍木綿。

同じ紋様でも少しずつ表情や色の違い、織りの違いを楽しんで頂けたらと思います。

 

ポケットは全部で3つ。

前ポケットにべんがら染めの太綱を表わした染め布をアクセントに。

表かぶせには、桜材を手彫りした留め具ををあしらいました。

こちらも布合わせと同様に、網代編みに手彫りしたものです。

留め爪も彫刻刀で手彫りしています。

材は30年以上乾燥させた山桜なので、赤味がかった色はお使いのうちにどんどん艶が増していきます。

 

紐は京都の老舗、伊藤組紐店の藤色の絹を。

帯締と同様に、上質な絹の組紐はふっくらした本体を心地よくキュっと引き締めてくれます。

組紐にはガラスのとんぼ玉をあしらいました。

noriko yamamotoさんの作品です。

紐を傷めないように、穴も丁寧に磨いて下さった特注のお品。

藍染めや古布に似合う色の硝子を合わせて手作りして頂いているものです。

ガラスのとんぼ玉は、繊細な紋様が炎の中で生み出される芸術です。

古布を使った小物入れと同様に、ガラス工芸のとんぼ玉も楽しんで頂ければと思います。

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薺nazunaの製品はすべて手縫いで仕立ててあります。

どこにも接着剤は使っていません。

長門の小物入れと同色の麻糸を一度ほぐして細く縒りあわせ、

蜜蝋を施してから一針一針縫いあわせています。

内布は木綿糸と絹糸で。

特に希少で古い布はポリエステルの糸よりも天然素材の糸の方が糸目が出ずに馴染みます。

絹は弱いと思われがちですが、意外に強い素材でもあります。

 

  *余談ですが、絹はその昔、ヒマラヤなどの氷の絶壁に挑む登山家の命綱でもありました。

  細い絹糸が沢山寄り集まって縒られた綱はどんなものよりも強靱だったようです。

  パラシュートの布も、昔は絹製の布で作られていたそうです。

  本来は絹という繊維は水をくぐればくぐるほど強くなるといいます。

  水洗い出来る絹こそ、本物の絹かもしれません。

 

手縫いにこだわるのは、布と布の合わせ目がふんわりとふっくら仕上るので、

手織りのものや上質の素材には手縫いで、というのが信条です。。。

手にしたときに心が和むような、かぶせを開け閉めする手が喜ぶような、

愛着の湧く小物入れに仕上ったと思います。

 

size : 17.5cm × 10cm × 2.5cm(厚み)

(蓋をぴったり閉ざした時のおよその大きさです。)

表布 : 長門 和紙を紙縒して漆(または柿渋)を施したもの (古布)

内布 :算崩しの藍木綿  藍の南部麻 (どちらも古布)

仕切りポケット ::算崩しの藍木綿    (古布)

パイピング:木綿、琉球の上布  (どちらも明治期の古布)

前ポケット:琉球の上布とべんがら染めの木綿 (どちらも古布)

留め具 : 桜材

留め紐 : 絹の組紐

その他 : 手作りのガラスのとんぼ玉、麻糸

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